ピアニスト?!藤田さん

私の友人の藤田氏から「8月○日コンサートがあるから是非見に来て…」の連絡。彼の本職はサラリーマン、夜勤もあると言う変則勤務。その上ピアノ歴35年というからたいしたものだ。彼とは2年前の パラリンピックで知り合った。

彼は評価委員もこなしながら又自身も出演者となりピアノを弾いた スーパーマン的存在であった。そう藤田氏は難聴者である。

 

彼との会話は私の口を見て必死で何を言っているかさぐろうとして、それでもちぐはぐな時は紙と鉛筆で私は要件を書く…そしてそれに言葉で返してくるというやり方である。遠方なので連絡方法はメールである(電話は難しいと言われた)。それ以外でも参考になる記事やこまごました おみやげのやりとりは昔ながらの郵送という手段を使っている。また私の発表会に友情出演でピアノを弾いてくれたり、また彼が会員である三重県の難聴者の会主催のコンサートに駆け付けたりもした。

 

そんなわけで8月○日のコンサートに出向いた。内容は藤田さんが幼少の時、初めて弾いた曲にはじまり 尺八とアンサンブルで童話を数曲弾いていた。もちろん「コンサート」というだけあり、ベートーベンからショパン、リストにグラナドスを弾くという名演奏ぶりであった。私は氏

の奏でる「音」が大好き だ。

 

繊細でとても優しいタッチの音で初めて聞いた時は涙が溢れた…。それは、この世の音から「遮断されている」と思えない程、またピアノの「音が聞こえない」とは思えない程、聞く人を和ませてくれる音色だからだ。聞こえる耳を持ち聞けると言うことが当たり前のなかで生活している私に「演奏することって?」「ピアノで表現する意義は?」これを新たに気付かせてくれたような、又原点にかえった爽やかな1日であった。